横河電機賞 受賞者インタビュー

北海道大学 大学院医学研究院 細胞生理学教室
准教授 藤岡容一朗 先生

受賞者プロフィール

学歴:
2005年
2008年


2023年

現在に至る


東北大学大学院工学研究科修士課程生物工学専攻修了
東京大学大学院総合文化研究科博士課程広域科学専攻修了
博士(学術)(東京大学)取得
北海道大学大学院医学研究科 博士研究員
同大学院医学研究院 准教授

【研究について】
科学技術の発展した現代においてもウイルス感染症との戦いは継続しています。新しい切り口での対策を開発するためにも、従来の分子レベルでの研究だけでなく、
ヒト生体内での感染症発症機序を理解するための研究が求められています。しかし、ウイルスが宿主細胞に取り込まれた後、ヒト生体内で感染が広がり発症に至る過程について、
未解明の部分が多いのが現状です。我々は最近、インフルエンザウイルスが感染初期過程において細胞間コミュニケーションを介して感染細胞の周囲の非感染細胞に働きかけ、
周囲の細胞において子孫ウイルスが取り込まれやすい環境を作り出すことを見出しました。これにより、感染細胞を起点に周囲の細胞に感染が爆発的に広がっていくことが
分かりました。また、細胞間コミュニケーションを積極的に行う❝特異的細胞❞が細胞集団の中に存在することを示唆するデータが得られています。そこで、”特異的細胞”の
特性を知ることができれば、ウイルスの感染拡大を防ぐことができるのではないかとの着想に至りました。SU10を用いてウイルスを細胞にナノデリバリーすることで、1細胞のみが感染する状態を作り出します。その後、細胞間コミュニケーションが生じるか検証することで、上記仮説の実証を試みます。また、感染初期過程において感染細胞をSU10でナノサンプリングし、RNA-Seq等で解析することで”特異的細胞”の特性を明らかにします。細胞間コミュニケーションを積極的に行う”特異的細胞”の特性を知ることが
できれば、感染初期過程での感染を制御する鍵因子の同定につながると考えられます。その鍵因子に対する阻害薬が感染抑制効果を有していれば、将来的な治療薬候補に
なりえます。以上のように、本研究が新しい概念での創薬開発へと展開していくことを目指しています。

【IRMAILについて】
自身の研究分野とは異なる分野の最先端機器も紹介してくれるので、大変有意義です。また、最先端機器を長期間無償賞与いただけるのは、研究者にとって非常に貴重な機会だと思っています。今後ともこのような素晴らしいサポートをしていただけることを切に願っております。

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北海道大学 大学院医学研究院 細胞生理学教室