キアゲン賞 受賞者インタビュー

 

京都府立医科大学 大学院医学研究科 分子病態病理学
助教 矢追毅 先生

受賞者プロフィール

1989年
1989年~1998年

1998年~2003年
2003年


現在に至る

九州大学大学院薬学研究科薬学専攻(微生物薬品化学) 修士課程修了
塩野義製薬株式会社(シオノギ医科学研究所及び中枢神経薬研究センター)研究員
(この間、1989年4月から1990年3月まで、九州大学附属遺伝情報実験施設・研究生)
京都府立医科大学附属脳・血管系老化研究センター病態病理学部門 助手
京都府立医科大学 大学院 医学研究科 分子病態病理学 助教
及び 附属脳・血管系老化研究センター病態病理学部門 助教





  (左から)呼吸器外科 井上先生、矢追先生、内堀様

【研究について】
早期非小細胞肺癌において、近年予後不良因子として新たに確立された腫瘍転移様式(経気腔進展;Spread Through Air Space, STAS)が発生する分子機構を
明らかにしようと研究を進めています。腫瘍実質の腫瘍細胞と比較して、そこから飛び出したSTASの細胞の分子的違いは未だ不明です。そこで、空間トラスクリプトーム解析や多重免疫組織化学などの手法を使って、STASの分子的特徴を明らかにする一方、細胞系譜を推定する試みなどに取り組んでいます。今後はシングルセル解析・モデル細胞株の
作製などを通じて、STASの発生と予後不良を招く分子機構を、エピジェネティックな背景も含めて明らかにしたいと思っています。また、こうした研究と併行して、STASに
着眼することで、肺癌治療や患者のQOLの改善など臨床にフィードバックできるような仕事にも取り組んでいきたいと考えており、今回の採択課題はその端緒として位置付けています。現在、早期非小細胞肺癌の手術において、標準術式が変わる流れにあります。しかしながら私たちは、STASを伴うか否かをもとに最も適した肺癌術式を選択することが、再発リスクを抑えることに寄与すると考えています。STASの有無は現状、術後の組織病理検査で初めて確定されます。もし術前検査法があれば、適切な術式を選択することで再発リスクを低減させられる可能性があります。患者に極力負担をかけないリキッド・バイオプシーサンプルを用いるマイクロRNA検査法が、その有力な候補になることを
期待しています。開発にあたっては、判定精度の高いマイクロRNAシグネチャーセットの同定に加え、性能の高い機械学習モデルの構築がカギになります。

【IRMAILについて】
IRMAILサイエンスグラントの良い点は、助成期間中に研究課題の遂行に有用な最新機器を自分の研究室で利用できる点にあります。同程度の助成金を得ても研究環境上の
制約から執ることができない技術的アプローチもあります。IRMAILサイエンスグラントはそのような敷居を大きく下げてくれるものと言え、大変ユニークで価値がある
仕組みだと思います。

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京都府立医科大学 大学院医学研究科 分子病態病理学