横河電機賞 受賞者インタビュー

神戸大学 大学院工学研究科 応用化学専攻 界面材料工学研究室
特命助教 森田健太 先生

受賞者プロフィール

学歴:
2014年
2017年
2018年

職歴:
2017年
2019年
2020年

現在に至る


神戸大学 大学院工学研究科 応用化学専攻 博士前期課程 修了
神戸大学 大学院工学研究科 応用化学専攻 博士後期課程 単位取得満期退学
神戸大学 大学院工学研究科 応用化学専攻にて博士(工学)を取得


神戸大学 研究基盤センター 機器分析部門 特命技術員
スカイワークスフィルターソリューションズジャパン株式会社 Senior Engineer
神戸大学 大学院工学研究科 応用化学専攻 特命助教



【研究について】
私の研究グループでは、水中で自己組織化してゲルを形成する性質を持つオリゴペプチドである「ペプチド型低分子ゲル化剤」を用いて様々な機能を設計・発現することを目的としています。その中で、特定のがん細胞を認識して殺傷するペプチド型低分子ゲル化剤をいくつか設計することに成功しました。例えば、①がん細胞内の加水分解酵素(MMP-7)に応答してゲル化するペプチド、②細胞内微小pH変化に応答してゲル化するペプチド、を見出しています。これらは、「自己組織化ペプチド薬」という新たな創薬分野の嚆矢として期待されています。
現在のところ、特定のがん細胞を殺傷する自己組織化ペプチド薬の作用機序としては、細胞内の特定の生化学的、あるいは物理的な刺激に応答し、細胞内でゲルを形成することが要因と考えています。しかし、ペプチド型ゲル化剤が実際に細胞内で働く過程を、ダイナミックかつ定量的に追跡することは困難でした。そこで、超低侵襲スマートインジェクター(横河電機社製)を用いてサンプルを定量的にシングルセル内に導入し、その後の経過観察を行うことで自己組織化ペプチド薬が細胞内でゲル化する過程を確認します。また、対照として高分子ゲルを導入し、低分子ゲル化剤と同様な細胞殺傷効果が表れるのかを確認する予定です。自己組織化ペプチド薬は細胞内の物質移動を物理的に阻害して細胞を殺すため、薬剤耐性を持つがん細胞が生じにくいと考えられます。このように、従来の抗がん剤とは全く異なる作用機序を持つからこそ新しい創薬分野として期待されます。加えて、近年、ペプチドに限らず自己組織化することで生理活性を発揮する低分子がいくつか見つかりつつあります。そうした分子がこれからたくさん見つかれば、より大きな視点として「自己組織化薬」という新たな学問分野の開拓に貢献できると考えています。

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IRMAILはバイオから電子デバイスまで非常に広範な分野をカバーした情報を提供している点で他のメールマガジンより優れていると思います。また、(卑しい話かもしれませんが)プレゼント企画やグラント募集があったりと、ついつい読んでしまう魅力がちりばめられています。今回は、私のような若輩者にご支援頂いて、横河電機様とIRMAILには大変感謝しております。これからも日本の研究シーンを支えていって欲しいと思います。

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神戸大学 大学院工学研究科 応用化学専攻 界面材料工学研究室